2009年10月15日木曜日

漢土の国

安藤昌益、『統道真伝』、下、岩波文庫、pp.35-36.

「・・・其の心意は亢(たかぶ)り、為人(ヒトガ ラ)は尺(たけ)六、七尺、或は五尺、強力・勇猛にして色に泥(ふけ)り、荒婬なり。その心術は甚だ巧み深く過謀なり。儒者は己れが国を称して中華と号す れども、皆(みな)中気を過ぎて、亢知・工慮にして、聖人という者起り理・似・貌・象を以て文字を作る。問術を始めて天文・地理を察すと言いて自然(ひと りする)一体の転定(てんち)を二に分ちて上下を立て、己れは上(かみ)に立ちて衆人を下(しも)と為し、五行にして一真なるを五品性と為し、男女にして 一人なるを五倫と為し、凡て一心なるを二心と説く。進退して一気なるを陰陽の二気と為し、転定・男女は一体・一人なるを三才と為し、皆己れを利せんが為に自然(ひとりする)真道を妄乱す。自然(ひとりする)直耕の転道を盗んで耕(たがや)さずして衆人の直耕を貪食し、上に立ちて奢賁(しゃひ)・華美・遊楽 を為し、女楽に泥(ふけ)り、学問を以て衆を誑(たぶら)かし、不耕貪食の多く成り、終に兵乱の始りて転下の転下を以て吾国・他国とに為し、転下を争い国 を奪い奪われ、合戦・争闘して止むこと無し。且つ体を土石の中に埋めて自然に隠れ具わり、気を以て妙用を尽し、掘り採(と)ること能わず、掘り得べからざる金銀を掘り采(と)り、通用と為し、奢り・華美・妄欲・迷乱の基(もとへ)を為す。万悪は此の一欲に始まる。乱世の止むこと無きは、此の金銀の欲に迷 い、奢・華・遊を願う故なり。此の余悪、諸国・万国・万嶋に溢(あふ)れ、金銀の迷欲の為に乱軍せざる国無し。是れ皆、漢土の国の中気を過する亢知(こう ち)に生れて、此の妄悪を為す。故に万国の欲悪の本(もと)は漢土の国に始まる。万悪の乱世の太本は金の一種にして、金を用うるの聖人に始まる。己れ一生 の為めに盗道を寛(ひろ)くし、永永に万国の乱欲と争世を始むること転下に又と無き大悪なり。故に末世・万国の諸悪は其の悪を糺(ただ)すに及ばず、悉く 聖人の失(あやま)りなり。欲の始めは金銀、盗の根は不耕にして食い貪(むさぼ)り、転定(てんち)の道を盗む。此の欲と盗の二悪は聖人の之れを始むるな り。・・・」

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