2011年2月9日水曜日

富の困惑

コモディティ価格は上げてきているし、インフレへの懸念も高まっているし、世界的に争乱を経験している国も出てきた。今年以降、かなりリスクの高い経過をたどるのか。そこで、Caixin onlineでAndy Xie の2月1日付けの論説を読む。

Embarrassment of Riches_English_Caixin

まあ、議論は別にして、じぶんなりに邦文にしてメモしておくと、下記のような議論になっている。現状の基本的な構図が理解できるか。

・・・以下メモ

富の困惑
世界は21世紀の最初の10年、より裕福になった。しかしなぜ誰もがいっそう貧しく感じるのか。

歪んだ繁栄

世界の穀物産出高はこの10年、それ以前の10年とほぼ同じペースで10分の1増加した。またエネルギーは3分の1増加し、これはそれ以前よりはるかに急速であった。エネルギー産出高の伸びの40%は中国の石炭生産に由来する。中国の石炭生産を除けば、世界のエネルギー生産は以前の10年間同様緩慢であった。

穀物とエネルギーは世界経済における最も基本的な投入物である。エネルギーと穀物は大きく低所得の人々に影響し、世界人口の圧倒的多数がこの範疇に入るとき、その低成長が示唆しているのは、生活が紙上で経済繁栄が示唆されるほど急速には向上していないということである。

そのうえ、世界の、ドルでみたGDPは二倍になったし、穀物やエネルギー産出高の伸びをはるかに凌駕したので、それらの価格は急騰した。FAOのグローバル食糧価格指数は10年間で138%上昇した。またブレント原油価格は1990年代の平均20米ドルから現在、バレルあたりおよそ100米ドルに上昇した。経済データが示唆するように米ドルでみた平均所得が90%上昇してさえ、食糧とエネルギーにおける並外れた価格上昇は世界人口の多数にとって、それを相殺してしまった。世界人口のかなりな部分が10年前より悪化しているかもしれない。

必需品のインフレが大部分の人々を沈滞させているのに、統計が示すのは少数の者たちの所得と富の急速な増加である。米国人口の上位1%が国民所得の4分の1を、国富の半分近くを得ている。10年前に倍しているのである。中国においては、所得に対する不動産価格の比率は10年前の二倍以上だが、不平等が二倍以上であることも示している。この傾向は中国と米国で最も鋭いかもしれないが、増大する不平等は世界的な現象である。所得における不平等の高まりは豊かな者たちによる支出へと経済成長を歪めてきた。そうした物は値段が高いし普及するものではない。したがって、紙上で言われるブームと民衆の不満は共存しうるのである。

有限の繁栄

経済データが繁栄を示唆するなら、それはそれ以上のなにかに現れなければならない。一例はなにかの製品やサービスでの急速な伸びであるだろう。私は三つのブームにある領域をみる。二つは中国に関連しており、一つは米国に関係している。

一つは、世界には軽工業品があふれている。中国の製造業部門の勃興がそのドライバーである。浄水器や炊飯器から、電子レンジまで。軽工業品は世界のどこにでもある物になった。それは中国の勃興による低価格である。貧しい人々にこうした商品はきわめて入手しやすい。

それはこの10年に3500億ドルから1.6兆ドルに上昇した中国の輸出に反映している。

こうした軽工業品の小売価格は先進国の販売棚では工場出荷価格の3から4倍、発展途上経済では3倍である。中国の輸出の伸びにこの率を掛け合わせるなら、中国の輸出急拡大が世界の好況の15%を占めると言えるかもしれない。

二つめは、中国のインフラブームが以前よりも、世界的なインパクトを十分に持つほどきわめて急速であることである。道路や鉄道、電力網のような中国の物理的なインフラは現在、規模において米国に匹敵する。そのほとんどが過去10年間に建設された。インフラは長期の投資である。そのインパクトは今日のGDPを使っては計算されえない。

にもかかわらず、この10年の中国の名目GDP4.5兆米ドルがそのインパクトを量るのに使われる。その量はこれまたこの10年の世界の経済繁栄の15%であろうだろう。

三つめは、IT革命が急速なペースで続いていることである。情報財の価格はこの10年で90%落ちた。その低価格はIT製品を低所得層に身近なものにした。

例えば携帯電話は、世界のほとんどの人々が使えるようになった。IT製品や情報サービスの名目価格がGDPの5%ほどであったにしても、その極端な価格下落で上記以外の繁栄の多くを説明しうる。

過大評価された繁栄

経済ブームは1、2の領域に集中する傾向がある。私たちは同じ事はあまり価値がないことをよく知っているが、GDPの計算にはこの要因は含まれない。水の浄水価格が落ちるとき、より低所得の家庭がそれを購入する。人は量によってその利益が減少しないといいうる。誰もが携帯電話を持ち、よりよいものに買い換えるとき、携帯電話市場の成長は明らかに以前より低い。

測定することの問題は部分的には、経済データと人々の感情の間の分離を説明するのかもしれない。世界経済は上記に述べた三つのエリアで急速に拡大してきた。その限界的な利益は減少している。他方で、食糧やエネルギーのような必需品は維持できない。したがって、エコノミストは意味あるGDPの成長を報告しうるが、その間、人々はより幸福ではなくなったのである。

緩和的金融政策の効果

緩和的金融政策は世界中で不平等を高めた。グローバリゼイションと教育は通常、不平等の最も重要な要因とみなされる。前者は技能にとって市場の範囲を増加させる。それで特殊な技能をもつ人々はグローバリゼイションから釣り合いのとれないほどの利益を得る。しかし現実において、エンジニアや科学者、コンピュータプログラマはグローバリゼイションから比類なき利益を上げてはいない。彼らの所得のプレミアムはそれほど増えてはこなかった。

教育によるプレミアムは先進国経済では重要であるようにみえる。

大学教育を受けた者とそうでない者との間には失業率において顕著な相違が存在する。理論上、平均的な教育レベルが低い新興国経済においてはいっそうそうであろう。現実は理論によく一致しはしない。需給のような別の要因が教育要因を圧倒するかもしれない。中国における、大学教育を受けた者にとっての減少する賃金プレミアムは供給が増えていることを反映している。ブルーカラーの賃金がいま、急速に上昇することで、そのプレミアムはほとんど消え失せている。

資産市場は不平等を駆り立てることで、他の要因以上にいっそう重要である。通常、資産や所得が急速に上昇している者は資産市場に参加しているか、関係している。GDPに対する資産価値の比率は景気循環を経験する。不動産や株式の価値総額は変動し、よい時に出入りしたものが豊かになり、そうでない者は貧しくなる。

所得と資産の配分は生産性とは無関係な、ほとんどカジノとなった。それは緩和的な金融政策が経済循環を膨らませ、ブームと破裂を引き起こしたためである。

中央銀行は経済が弱いとき刺激すると信じている。それは安価なマネーで資産バブルを作り出す。金融積極主義が世界の問題の最大の原因である。それは世界中で、実体経済の活動を脇に押しやる”資産ベースの経済”を作り出した。資産市場を通した資産と所得の集中は社会における充足感の水準を減退させた。嫉妬が主要な理由ではない。ほとんどの人々は時が経つにつれて暮らし向きがよくなってはいないのである。

スタグフレーションが世界に付きまとう

世界経済はスタグフレーションに滑り落ちている。インフレが頭をもたげているのに、経済の成長率は落ちている。IMFの予測は、先進国経済は、GDPの成長率は2010年の3%から2011年は2%に、新興国経済は7.1%から6.5%に減速するとしている。

さらに、必需品のインフレははるかに高い。食糧とエネルギー価格が急速に上昇するとき、携帯電話やパソコンのどのような価格の下落もほとんどの人々の幸せへのネガティブな衝撃を相殺できはしない。たとえそれがGDPの計算において技術的に可能であるときでさえそうである。

皮肉なことに、金融政策の立案者はインフレを評価判断するときに、しばしば食糧とエネルギーを無視する。両者があまりに価格変動しすぎるという理由からである。そう、それらは価格が変化しすぎる。しかし、その大きな振幅のなかで、過去10年、それは急速に上昇してきた。その短期的な攪乱に焦点をあて、その長期的な趨勢を無視するのはおかしい。食糧とエネルギーのインフレが他のなにもかにもへと広がるのは時間の問題である。その拡大はいま起こっている。デフレの国、日本でさえ、2011年には若干のインフレを予測している。

昨日の資産インフレには今日のインフレが続く。経済を刺激するという名目での緩和的な金融政策は過去10年間繰り返し実施された。通貨供給量の増加はまず資産市場に向かい、物価上昇のない資産インフレを引き起こす。

まことに、いわゆる金融刺激の効果は資産バブルを作り出すことからくる。資産市場におけるマネーストックの蓄積はいつまでも続きはしない。それは結局、資産バブルの崩壊ののち、CPIに向かう。中央銀行は資産バブル崩壊の影響に対処するためにさらに多くのマネーを追加する。さらにインフレを進めるのである。インフレは避け難い。過去のバブルを煽ったマネーストックとその破裂に対処するための追加的貨幣増加は完全にインフレとなるであろう。

生活が危険な年

インフレは過去の資産バブルで利益をあげなかったか、失敗しなかった中低所得家庭を締め付ける。多くの家計で生活水準が下落するので、社会的不満は激化する。他方でIT革命の事後効果は情報を安価にしてきた。その結合は爆発的混合である。

今年、小国でビッグバンが始まった。チュニジアの人々は立ち上がり、政府を倒した。このような爆発にはそれぞれ、独自の文脈があるが、ほとんどの人々にとっての経済困難がそうした出来事に役立つ環境を提供する。インフレは間違いなく経済的困難の指数である。それはまだ高まっているので、チュニジアのような爆発がかなりありそうである。

世界はもう一つの危機へ向かう

消火に当たるとき、第一の決まりは炎の中に燃料を投げないことである。今日のインフレ沈静化のなかで、この決まりに従ってはいない。上記で議論したように、インフレは避け難い。既存の貨幣ストックがインフレ的であるからである。インフレを封じ込めるには将来のインフレに貢献しないような方法で貨幣供給を増加させなければならない。通貨供給量の増加は名目GDPの伸び以下であるべきである。それに対応して、予想しうる将来の平均インフレ率より上に金利を引き上げる、すなわちマイナスの実質金利を
許容しないことである。

残念ながら、この原則はほとんど守られていない。

ユーロ圏のインフレ率はすでに、ECBの上限である2%を超えている。

金利の上昇は脅威であったが、そうならないと誰もが知っている。債務危機がその南部の経済に影響を与え続けているからである。

英国のインフレ率は4%である。莫大な財政赤字をもち、経済は最終四半期に収縮した。バンク・オブ・イングランドはインフレを黙認しそうである。連銀はインフレリスクを無視し続けている。高い失業率が賃金を抑制しインフレを抑えると述べているのである。機能不全の金融システムと高失業率を伴いながら、米国は他国の後でインフレを経験するであろう。しかしGDPの5分の1を超える農業とエネルギー会計では、輸入によって、米国は世界のインフレから逃れることはできない。

先進国経済は余りに多くの債務を抱えているので、インフレに取り組むのに気が進まない。その債務は金融危機までの10年間に50%増加した。そうして彼らは巨額の財政赤字を実行し続けている。

新興国経済は通常、その金融政策で受身である。経済成長にとって貿易や外国の投資に依存しているからである。先進国における緩和的な金融政策に先立ちインフレを制御することができない。これまでのところ彼らがしたことで、別の方法を示してはいない。主な示唆は金利を引き上げることが不本意であるということである。金利は実質金利がマイナスであることを除去するのに充分なほど速く上昇してはいないのである。

長引くマイナスの実質金利は常に金融危機を導く。

これまで繰り返し書いたように、次の危機は米国国債市場の崩壊か新興国経済におけるインフレが誘発するハードランディングのいずれかで始まるだろう。タイミングは2012年後半にありそうである。

・・・メモ終わり


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